長時間労働是正と所得水準引き上げ…
記事「36年連続で子ども減少 前年比で増加は東京だけ…」の続き…。どうすれば、少子化が解消されるかの具体的なシナリオの2つ目が、この「所得水準を上げ、インフレを起こす…」ことだ。前述記事「長時間労働を法規制により厳罰化する…」でも触れたが、少子化の原因である未婚率の上昇を食い止めるには、長時間労働を是正し余暇を作るだけでは不十分で、同時に所得水準を引き上げることが、肝になる。単純に長時間労働を是正した場合、今まで得ていた残業代が入らないことで、この是正がまるで改悪かのように当人にも映るからだ…。人間背に腹は代えられず、頭では長時間労働が減ることは改善と捉えても、それによって収入が減ることは耐えられないのだ…
▶️ 少子化の何が問題なのか⁉️なぜ少子化になるのか⁉️
▶️ 日本の少子化を食い止めるには…⁉️
▶️ 労働時間規制法制化に見る日本の問題点…
本質的な課題は世代間格差…
というのも、少子化の根本的な原因は、世代間格差にあると私は考えている。高度経済成長期、バブル期、現在と世代の異なる3世代を30年単位くらいで区分し、比較すると話が整理しやすい…
● 高度経済成長期
今の日本の礎を築いた世代であり、企業も日本全体も右肩上がりに年10%以上急成長し、それが継続することを前提にしたいわゆる日本型経営(終身雇用・年功序列・企業内組合)が成立していた時代。従業員は家族と捉え、雇用と手厚い福利厚生、毎年確実上がる報酬が約束されていた…
● バブル期
高度経済成長期の恩恵を受け、日本型経営を維持されていた世代。実は変動為替相場制に移行し、マーケットがグローバル化し競合相手がより合理的な外資系企業法人まで台頭したにもかかわらず、実態の伴わないインフレを信じきっていた時代…。ご存知の通り、後に、株・土地・不動産などの価格が大暴落した…
● 現在
マーケットがグローバル化したことは当然となり、経営は合理化を余儀なく迫られ、福利厚生は必要最小限となり、成果主義が一般化した世代。日本の労働法規においては、既得権益を不利益に変更することは容易には認められない為、高度経済成長期やバブル期の年配層の待遇を維持する為に煽りをくらい、報酬水準は引き下げられ、雇用自体も契約的にシフトした時代…
加えてこの異常に高齢化していく状況下においては、健康保険料、年金など社会保障費を引き上げるしかなく、またこの煽りをくらうのも若年層であり、言葉の通り、若年層が高齢層を養う構造にあるのだ…
こうした時代の変遷による、世代間の格差、金有る年配層と金無い若年層の平均生涯収入は、実に数億円に及ぶという…
しかも悪循環なのは、高齢化の進む日本においては、民主主義という名の多数決により、投票規模ある年配層の意見が反映されやすく、政治家も当選することや当選を維持する為に、投票規模ある年配層の既得権益を守る政策を打ち出し、適えることで、この世代間格差の溝は埋まり難い構造にあるのだ…
この状況を打破するには、若年層の所得水準を引き上げることが有効だと考える。しかも世の中の企業が同時にだ…。もしかすると国の介在が無くても、今の労働力不足の現状を踏まえると、所得水準が自ずと引き上がることも想像されるが、ヤマト運輸や佐川急便が、労働力不足を理由に、従業員の待遇を引き上げ、顧客への請求単価に転化することが、今後多くの会社で増えてくることだろう…。
▶️ 世代間格差を断ち切れ❗️
▶️ 高齢者蔑視をするつもりはない。社会保障も理解する。でもその税の使い方は絶対に間違っている💢
▶️ 格差は拡がりつつあるのか⁉️
War for Talent
今の各社人事は同じように頭を抱えているのが、人が採用出来ないということであり、求職者一人に対して、どれだけの求人数があるかを示す有効求人倍率は、いよいよ1.5倍を越えようかという状況にある…
●有効求人倍率推移
この労働力不足を回避するには、
の確保や活用に取り組んではいるものの、それでもやはり限られた労働力の取り合いであることに変わりはなく、他社よりも魅力的な求人にする競争が始まっている。そうでもしないと、今いる新規労働力どころか既存社員ですら魅力的な求人に流れてしまう可能性も高まっているのだ…。人事ではこの状況を揶揄し「War for Talent 」なんて表現しているが、まさに競争どころか、なりふりかまっていられない戦争状態に突入しているのだ…
▶️ 【マジでヤバイ】全都道府県で子供より高齢者多く(15年国勢調査人口 )
▶️ 育児が困難となる負の連鎖
取得水準を上げ、インフレを起こす…
なりふりかまってられない戦争状態なので、企業は大きな変革を迫られている。当然ながら圧倒的なシェアを確保している企業は従業員の所得水準を引き上げ、新規労働力の確保と既存社員の引き留めを行い、一方で経営を維持する為に、高騰した人件費コストを顧客に転嫁していくことになろう…。今、安倍政権が取り組んでいる「同一労働同一賃金」のガイドラインも同じことが言える。法制化されれば、今まで正社員と契約社員が、同じ業務を同等の責任を負っている企業は世の中に多数あるかとは思うが、公平な待遇であることが法的に求められ、正社員を契約社員に転換することは、今の労働者保護主義に立つ日本の労働法規では容易でないことから、多くの会社は契約社員を正社員へ転換せざるを得なくなる…
こうした背景から労働力人口の所得水準は全体に引き上げられ、人件費コストは商品・サービスに転嫁されると物価指数は今まで以上の角度で高まることと推察される。こうなればまた生活費高騰を理由に、企業は所得水準を上げるという循環が生まれる。こうなるとインフレ契機に入ったと言え、働く人=若年層は所得と物価が上がり、働かない人=高齢層は物価のみが上がり、前段に記載した世代間格差は段々とその差が埋まることになるのだ。それだけではなく、今高齢層が抱える貯蓄が消費に回らないという問題も実はあるのだが、インフレはこの貯蓄が消費に回る重要なキッカケともなるのだ…。この点については次回記事「高齢層の貯蓄が、実質目減りする…」で詳しく詳しく述べたいと思います…
▶️ 赤子を見捨て、全力でニートを支援する国・日本
▶️ 20代から10年で5,000万円貯めるには⁉️⑧ 〜お金は持ってるだけでは減っていく〜
続く…
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<推薦図書>
どうやら日本の政治には、若者という視点は存在しないようだ。民主党政権は、国家公務員二割削減のために新規採用枠を四割近く削減した。目玉の子ども手当の財源も、結局は赤字国債である。まかり通る不公平。いまや政治のあらゆるプロセスが、次世代の若者たちに問題を先送りにしている。いまこそ若者は声をあげて立ち上がるべきである!本書では「雇用」「社会保障」「政治参加」「子育て・教育・家族」の四つの視点から、世代間格差の本質を明らかに。そして具体的な政策=ワカモノ・マニフェストを提案する。
書籍名:世代間格差ってなんだ 若者はなぜ損をするのか? (PHP新書 678)
著者名:城 繁幸 , 小黒 一正 , 高橋 亮平